重要なのは、ビジョンではなく価値
📘 ゴールのビジョンがそのまま実現することは、決してあり得ないことではありません。ですが、必ずしもそのまま実現しなければいけないわけでもありません。
大切なのは、次のようなポイントをゴール更新のたびにクリアできているかどうか、です…
・価値の純粋性や抽象度を、高められているか?
・未来のゴール達成状態を、リアルな感情として体験できているかどうか?
ゴールのビジョンの細かな内容にこだわる必要はありません。それは、脳が持っている知識や記憶の断片をつなぎ合わせ、便宜的につくったストーリーにすぎないからです。
【実例】
以前、私が参加したコーチングプログラムで印象的な出来事がありました。ある参加者が、ワークを実践している最中に「自分にとっての大切な価値は、家族だ」と、突然ひらめき、深く納得する瞬間がありました。その人が次にとった行動は、立ち上がって周囲にその旨を宣言し、そのまま家族の待つ家に向うことでした。コースを抜け出し本当に家に帰ってしまいました。
このゴール設定のプログラムでは、自分にとっての価値を発見し、迷いや葛藤が統合され、自分らしい選択につなげることが目的でした。その場面を目撃して、私は典型的な成功例を目撃したと思いました。おそらく彼も、当初は何か仕事や個人的な目標、何らかの課題を解決するために、プログラムに参加していたはずなのです。ですが…
・「自分にとって最も大切な価値は、すでに目の前にあった」
・「それが大切だと意識化でき(気づき)、意識的に優先できた」
・「その価値に気づき、迷うことなく即座に行動した」
という結果を手にできたのです。
【価値に確信を持つと、人は迷わない】
コースは数か月つづくプログラムでしたが、その人の姿を見ることはそれ以降一度もありませんでした。その人は、「価値」というブレない判断基準を見つけたことで、数か月、数年に渡る長期的見通しへの確信を得て、迷いなくプログラムを手放してしまいました。
たったひとつの判断基準でも、それが本質的なものであれば、ゴールの純粋性や抽象度を高め、長期的に生活の質を高める力も持ちます。私は、その人が今もその価値を基盤に、個人的なゴールを強く追い続けているのではないかと感じています。
この「確信を得て行動する瞬間」には、誰かからの評価や承認、アドバイス、指示、命令は一切関係ありませんでした。あったのは、内面的な探求と自己判断のみ…
・「価値」が見えたことで、思考や感情や行動が統合されて
・納得感、満足感、モチベーションなどが一致
・瞬間的に確信し、行動に移した
こうした状態になると、たとえ「コースを最後まで履修すること」や「視覚を取得すること」が一般的には重要とされていていも、本人にとっては「価値の発見」こそが、何よりも大切な成果なのです。
ゴールのビジョンは実現するためのものではなく、意識も無意識も価値の方向に向かって統合させ、ブレない「自己」を確立するためのものです。もし、自分の変化に不安を感じたり、周囲の人がその変化に戸惑ったりすることがあっても、問題ありません。なぜなら、「自分の価値観を選択すること」は結果的に…
・「大切な存在をより大切にすること
・「周囲の人すべてにとって、より良い選択をすること」
につながるからです。
今ある関係性は、良い方向へ進んでいきます。そして、価値に確信をもつことができれば、今まで動じていた場面で再びブレることは減ってくるでしょう。もちろん、完全にブレや動揺がゼロになるわけではありません。ですが、迷いや不安が生まれても、「自然体の真ん中のポイント」があればバランスを整えやすくなります、さらに、そのブレや動揺を逆手にとり、モチベーションに変換することも可能な方法になっています。
6-10は省かないこと
6-10で特定した、ゴール達成状態のプラスの価値についての補足です。ゴール達成時のプラスの価値を明確にすることは重要です。価値は、実際の体験の中にあり、感情に没頭した状態で見つけるものです。頭で考えて導き出すものではないため、6-10プロセスは必ず実践しましょう。
ゴールでのプラスの価値は、より自分らしく、本質に近いところにあります。いくつかの価値の源泉を自覚できるようになると、「自分らしさ」を感覚的に理解できるようになり、自己評価も自然と高まるでしょう。
また、ゴール状態で見つけた価値は、今後の判断や決断の助けにもなります。価値を言語化できていると、納得感ある選択ができ、結果にもつながりやすくなります。価値を基準にした選択や決断であれば、迷いや後悔を減らし、冷静な判断が可能になるでしょう。ゴールの価値を基準にした選択を積み重ねることで、ゴールがより身近に感じられるようにもなるでしょう。