この記事でわかること:「価値」がゴール達成の原動力
- 本当にやりたいこと(自分が価値を感じること)に関してだけ、ゴールを最新に更新しつづければモチベーションが持続
- ポジティブ感情/行動が持続、達成できているという自己評価=結果が出やすい
- 好き、楽しい、という感情=結果=ゴール達成
📘結果を出やすくするためには、達成に向けた大量の行動が必要です。本書では、読んだ方が実践を重ねることで、ゴール達成に必要な行動が「自然に起こる」ことを目指しています。心理学的技法を取り入れていますが、大切なのは、“実践できること”そして“結果が出ること”なので、専門用語を極力避けました。専門家から見ると、独自の定義や表現には違和感を覚えるかもしれませんが、“実践できることを優先”した結果です。
前述の通り、ゴール達成への行動を持続しやすくしてくれるのは、ポジティブ感情です。本書で言うポジティブ感情とは、モチベーションと直結している種類のものを指します。
「感情」とは、「心の状態」に加え「その心の動きに関連した身体の状態」も含まれています。一般的に、「行動」は感情が起点になって起こるとされていますが、実際には「無意識から」行動が生じるという説もあります。この場合の「無意識」とは、思考も感情も通さずに自動的に生じる、という意味です。
本書の方法は「ポジティブ感情」と「無意識」の両方を動員して、ゴール達成に向けた行動へ向ける方法になります。そのため、無意識に眠っているゴールを発見し、意図してそれを活用する内容も含んでいます。
本書で言う「結果」は「ゴール達成」のことです。ゴール達成とは、少なくとも次の2つの状態を指します…
① 自分の価値に沿っており、ポジティブな感情/行動が持続している
② 達成できている、という確信と自己評価ができている
私自身の経験を振り返ると、この2つが満たされているときモチベーションが保たれていました。
自分らしい価値観にそっていればポジティブでいられ、ゴールへの行動も途切れない。つまり、本当にやりたいこと(自分が価値を感じること)に関してだけ、ゴールを最新に更新しつづけることで、モチベーションが持続するのです。メソッドにはHave toの要素がないため、私のように頑張れない人でも、習慣化を目標にすることなく続けることができました。
外部からの評価とは関係なく、「達成した」と実感できる瞬間が、定期的にやってきます。誰かに褒められたり、自慢する必要はなく、心の底から喜べるものです。この「達成した」という確信は、ふとした瞬間に訪れます。他人に証明したり、認めてもらったりしなくても、十分に満たされるのです。この確信は、過去積み重ねが「できていたから」だし、そして「この先もできるんだ」という主観的な判断から生まれます。その結果、次のモチベーションへとつながっていきました。
話が少しそれますが、自分にとっては最高のゴールであっても、他人には理解されにくいことがあります。たとえば「溢れ出て止まらない愛」というものがあるとしても、その対象は、人によって違うはずです。同様に、「自分らしい価値観」だけを起点にしたゴール設定をすると、共感してくれる人の数は減るかもしれません。それは、価値観が個別のものだからです。
もし、「他人からの評価や承認を得たい」など「渇望感」「飢餓感」の欲求が強いなら、本書のメソッドでは「まず個人的なゴール達成への確信を積み上げる」ことをおすすめしています。過去の「原因」「犯人探し」に時間を費やすより、「プラス方向のゴール」に意識を向け、「モチベーションを増やす」方が建設的だからです。
そのためには、ゴール設定で「自分がポジティブでいられる価値に沿って自分自身で決める」ことが重要です。価値は目には見えませんが、自分の「らしさ」と直結している原動力です。価値の真ん中を生きているとき、モチベーションは自然と高く保たれます。それは、夢中になれる時間であり、誰かが見ていようといまいと、自然に行動させてくれる力です。
ただし、「本人にとっては、最高のゴール達成状態」であっても、他人と比較すると「平凡で大したことのない結果」に見えることもあるでしょう。それでも、重要なのは「昨日の自分より成長できた」という実感や喜びではないでしょうか。
「成長の喜び」は、年齢を重ねても変わらないものです。その結果を支えるのは地道な積み重ねです。
本書のスキルは、強制的に目標を達成「させる」ものではありません。達成のプロセス自体が楽しく、自分らしさを伸ばしながらゴールへ近づく方法です。物質的な成功を否定しませんが「幸せや豊かさは心の中にある」という視点を大切にしています。
量子力学では、存在は確率でしかないことが証明されています。つまり、絶対的な物差しや確実な外的基準がない、ということ。すると、人の能力を測ったり人と比較したりすること自体、正確にはできないことになります。本書のように、自分の内的な基準だけを信頼したゴール設定でも、大いに意義があるのです。ゴールは自分らしさを起点にして自分で決めて良いのです。ゴールを決める基準は、「楽しい」「好き」などの、物事に没頭させ、熱中させ、集中させてくれる感情です。このポジティブ感情は、リラックス、能力の発揮しやすさ、フットワークの軽さなどに関わるモチベーションの源泉です。
「楽しい/好き」「Want toだけ」を出発点にしたゴール設定には、メリットがあります。それは、モチベーションが湧きやすく継続しやすい方向を意識しやすくなることです。
私は、失敗を極力避けるタイプです。その理由のひとつは、恥をかきたくないからですが、あるとき「ポジティブな感情から始めた行動の結果は、抵抗なく受け取れる」ことに気づきました。たとえば…
・恐る恐る始めたことで失敗すると気持ちが落ちやすい
・「楽しくて好きだから」「やりたいから」と思って始めたことは、たとえ失敗しても全然落ち込まない
ポジティブな感情から出発すると、どんな結果が出てもすぐに前向きな自己評価へと戻るのです。「失敗したけど、楽しかった」「負けたけど、なぜかスッキリしている」といった感覚として表れます。つまり、ポジティブが出発点なら、結果に振り回されず、その先も嫌な目に遭いにくいのです。
少し考えてみると、これはごく自然なことでした。失敗しても負けても、それほどダメージを受けなかったのは、常にモチベーションの湧いてくる方向に意識を向けていたからです。こうした経験は、誰にでもあるのではないでしょうか?
そして、ゾーンやフロー状態に近づいてくると、頭の中は静かになり「楽しい」や「これ好きだ」など直感的な感覚があるだけで、いちいち頭の中で評価や判断をすることがなくなります。
「その瞬間」に感じている価値を、その場で意識的に言語化しておくと、必要なときにゾーンやフロー状態を再現しやすくなります。過去を振り返って「その瞬間」はいつだったか?意識することで、だんだんと思い出せる種類のものです。(本書のスキルには含まれていません。本書に含まれるのは「過去」ではなく、「未来の記憶」を再現する方法です)
ほかに、「楽しい/好き」という感情には、主体性を高める効果もあります。やりたいことに取り組んでいると、自然と責任の幅が広がるのです。
私は末っ子気質で、我を通したがる一方で面倒なことはすぐに投げ出そうとします。ですが、身近なことから「楽しい/好き」を押し広げていった結果、責任の範囲は広がり、物事に白黒つける決断力も高まりました。また、楽しく好きなことに没頭していると、恐れや面倒くささも感じにくくなるため、行動のハードルも下がります。もちろん、年齢や経験を重ねた影響もあるかもしれませんが、ポジティブな方向を意図することが、結果的に主体性につながったとという実感があります。自己評価も高まり、それだけでも行動が保ちやすくなりました。
第2章のスキルは、自己判断を起点にポジティブ感情を増やし、モチベーションを保つことを目的としています。
ここでは私の経験を例に挙げていますが、本書の内容は読者が自由に課題やゴールの内容を設定して使えるようになっています。セルフコーチングであるため、ゴールの中身について誰かに評価も判断もされることはありません。自分のペースで限界突破に取り組めます。
過度に頑張ったり無理をしすぎると、緊張やリキみで能力は発揮しにくくなります。本メソッドでは、上へ上へと高いゴールに挑戦しつづけても、自然体を保てる限りは自己評価もゴールに沿って向上していく構造になっています。人真似ではない、自分なりのうまくいかせる方法も見つかるかもしれません。実践がスムーズなら、望む結果へ「考えるよりも先に、気づいたら行動していた」という感覚で、ゴールに向かうことが増えるものと思います。
お伝えしてきたように、ゴール達成行動の原動力となるのは「価値」です。他人や社会から賞賛や評価を受けることがあっても、人の注意力は散漫で気まぐれで、すぐに忘れてもしまうものです。たとえ評価されても、本人ですらやがて慣れてしまって、喜びは持続しません。
では、もっと個人的で本質的、かつ長期的に生産性を支える喜びとは、何でしょうか?たとえば、以下のようなものが考えられます…
・能力や才能を発揮できているという実感
・安心感とともに、力強い自分も感じること
・興味/関心/好奇心が尽きないこと
・リラックスしながら楽しめること
・無条件で心が満たされること
・過程そのものが好きであること
これらは、言葉にすると薄いですが「自分らしさ」を確信できる感覚そのものです。本書の実践では、ご自身なりの本質的な喜びをゴールとして設定していただきたいのです。
外側には情報が溢れており、本音や本心を見失う要素は沢山あります。ですので「心から望むことかどうか」を常に意識することが大切になります。
前述したように、心からそれが好きで、本気で楽しんでいる最中は、「これが好き」「今楽しい」といった思考は働きません。逆に、思考が働いているときは、まだ完全に没頭し切っていないとも言えます。そのため、価値のヒントを探す努力をするなら「本当に没頭できていた瞬間」の心当たりを意識的に振り返る機会が必要にはなります。
例えば、家の中でメガネやスマホを見失ったとき、どのような過程で見つかるでしょうか?「最後にいつ、どこで触って、どこで見たか」と記憶の脳内検索が始まりますね。脳は、答えを思い出すまで無意識のうちに探索します。そのとき思い出せなくても、ふとした瞬間に「そういえば、あそこに置いた」と後になって突然気づくことがあります。それは、無意識下でもアンテナが立ちつづけて探索がつづいていた、ということを意味します。
同じように、「好き」で「楽しい」瞬間はいつ?どこで?何を見て?何に触って?何を聞いて?何をしているときだった?など、思い出せるまでアンテナを張るなら、時間とともにいくつかのヒントは見つかるはずです。
さらに、人から「それをしているとき、すごく楽しそう」「それ、好きなんだね」「そんなことができるの凄い。仕事にした方がいいのでは」など、指摘されたことを思い返すのもおすすめではあります。
もし、「これをしたら、ワクワク楽しいかも」と感じる未経験のことや気になっていることがあれば、その分野に詳しい人の話を聞き、一通り情報を調べて、手当たり次第実践してみる、というのもおすすめできます。私達には、体験しないとわからないことや知らないことが沢山あるし、価値は体験の中に存在しているからです。
以上のような方法で自分にとっての「価値のヒントに近づく」ことはできます。ただし、わかるのはヒントだけに過ぎませんし、「過去に経験した“価値”」に関して本書では重きを置いていません。実感や確信を得るなら、メソッドに沿った「未来のゴールの言語化」を通じての発見になっていきます。
前述しているように、ポジティブ感情をつくりモチベーションをコントロールする鍵を握るのは、「価値」です。具体的に言えば「自分の価値基準」=「自分らしさをつくっているもの」です。当然ですが、見つけ方を知らなければ、それを自覚することすらできません。
価値をモチベーションの源泉として活用するには、積極的に無意識部分を意識化していくことが大切です。意識化は、意識すればいいだけなので簡単です。ステップのひとつひとつは、それ位の簡単さで難しくありません。
価値とは…
・思わず行動してしまう対象
・自分を迷いなく動かす源泉
・心からやりたいこと
・大切/重要なこと
・人生の潤い
・生きがい
・やりがい
などのこと。私達が物事の優先順位を決めているときに、無意識に使っている基準なのです。それを意識的に使えるようになると、モチベーション維持に役立つようになります。